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日常生活(ブログ)

理学療法学科

井口奈保美先生の素顔に迫ります(その3/最終回)

こんにちは、履正社国際医療スポーツ専門学校 広報部Mです。

 

理学療法学科教員・井口奈保美先生へのインタビュー、最終回をお届けします。

本校を卒業後、大阪回生病院へ入職された井口先生ですが、どんな経緯で就職を決めたのでしょうか。病院での1日や、患者様への想いを語ってくださいました。

※前回までの記事はこちら(クリックすると記事にジャンプします)

その1

その2

井口先生のプロフィールはこちら

「セラピストの治療ありきじゃない。患者様が治りたいかどうか」

――井口先生は本校を卒業後、大阪回生病院に入職されました。どういう経緯で就職先を決めたんですか。

4年生一期目の実習先だったんです。患者様ファーストの現場で雰囲気も良く、いいなぁと感じていました。決定打は、患者様に「ここの先生方はほんまにいいから、ここにし!」と強く推されたことです(笑)。患者様って、本当によく病院を見ていらっしゃる。40分間一緒にいる理学療法士の人柄を敏感に感じ取っているなぁと思います。

――患者様が井口先生の将来を決めた(笑)。

ちなみにその患者様とは入職試験のときにもたまたまお会いして。「待ってるわ」と言われました。入職後も最初に担当させていただいたんですよ。

――ご縁が深い患者様ですね。

そうですね、ありがたいことです。

――病院での一日はどんなスケジュールでしたか。

8時半に出勤し、9時から仕事が始まります。1日10人ほどの患者様を担当し、引き継ぎ業務をして夕方には病院を出る感じでした。週3回、大学の女子バレーボール部でトレーナー活動をしていたので夜はトレーナー業務を。ケアが必要な選手を診たり、練習後は監督、スタッフとミーティング。土日は試合の帯同でした。

――忙しいですね……!

オフの時間がトレーナー活動の時間でしたね。

――病院に勤めていた頃、うれしかったことは?

治療して患者様が良くなるのはもちろんなんですが……。退院後、経過観察のたびに顔を出してくださる方がいて。わざわざ私を訪ね、良くなったことを報告してくださるのが本当にうれしくて。こちら側が「良くなった」と自己満足で決めるのではなく、患者様自身が「良くなった」と感じている。それが一番大切だし、この仕事の醍醐味だと思うんです。

――高校時代、ケガに悩んだ井口先生だからそう思うのでしょうか。

実は高校時代だけでなく、2年前に大腿骨の骨切(こつきり)術をしてまして。経過があまり良くなく、何度か手術とリハビリを経験しました。自分が勤める病院で治療を受ける側になり、自分が診ていた患者様と一緒にリハビリを頑張りました。

――そうだったんですね。

普通だったら手術もネガティブに捉えるんですが、「患者様の痛みがわかるの、私だけやん!」と思って(笑)。患者様のほうも、「自分のことをわかってくれるのはこの人しかいない」と感じてくださったようで。話をしに来てくださったり、治療抜きで、人として必要としてくださったのがうれしくて。入院中、同じ症例の患者様と「骨切会」「チーム骨切」というグループが結成し、今も連絡を取っています。私、会長らしいです(笑)。

――(笑)。その会では、先生はどんな役割を? 

会のメンバーだったある患者様が、セラピスト(理学療法士)と信頼関係が築けず困っていらっしゃったんです。私は双方の橋渡しをしていました。セラピストとしては(患者様に)「こういう風にしてほしい」という要望はどうしてもあるものですが、患者様側としては「いやいや、それはできない。だって……」という思いがあります。そういった、心の部分を伝えるというか。セラピストにとって技術はもちろん大切なんですが、言われたようにできないのにも理由がある。患者様の心情を完全には理解できないとしても、「寄り添う」ことはできますから。

↑病院や介護保険施設など、本校の学生はたくさんの現場で実習を重ねます。

――患者様の心のうちに思いを馳せる、ということですね。

そういったことは、学生にも話しています。「あなたたちの治療ありきじゃない。患者様が治りたいかどうかだよ」と。セラピストのエゴで治療するのは違うよ、と日頃から伝えているんです。患者様思いじゃないと私、ブチ切れますから(笑)。

――温厚な井口先生が!

患者様はたとえニコニコしていたとしても、本当はとてもしんどいんです。痛いし、症状はすぐには良くならないし。とはいえ、周りに心配もかけたくないからつい「大丈夫」と明るくふるまってしまう。心はたくさん傷ついているんです。悔しいし、申し訳ないし、悲しい。そんな気持ちを抱えている。病室でふと顔を合わせただけで涙ぐむ方もいらっしゃいます。そういった背景も知らずにセラピストが関わるのは……という感じです。

――理学療法士として、患者様と接する際に大切なことですね。

実習評価や進級判定では知識や技術、学力がフォーカスされがちですが、人として受け入れられていく存在かどうかの「情意面」もとても重要です。ここが伴っていないと、理学療法士としての資質が問われると思います。「この人に担当してほしくない」と患者様に思われたら職を失うわけです。「自分はできていると思う」と言う学生にほど、「そんなに簡単じゃないよ」と釘をさしますね。「あなたが放ったその一言が、誰かの人生を左右するかもしれないよ」と。

――最後に、先生の今後の目標を教えてください。

今お話ししたような、情意面が豊かな学生を育てたいですね。「運動器系理学療法治療学」の初回授業でも言いました。患者様はリハビリをやりたくて来たわけじゃない。とてもネガティブな状態でセラピストと出会っています。本当は出会わなくてもよかった人間たちが、人生の中のほんの数か月関わるとはどういうことなのか。その意味を、自分たちで見出してほしいと思っています。

――井口先生、ありがとうございました!

※今回の取材の裏側を、広報ブログでスピンオフ掲載しています。こちらもぜひ、ご覧ください。

井口奈保美先生インタビュー【番外編】

 

【広報Mの取材MEMO】

今、先生がやりたいことを伺いました。「海外旅行がしたいです。台湾でおいしいものが食べたい! 前の職場に台湾マスターの子がいるので、行くならその子と(笑)。あとはスペインのサグラダファミリアにも行ってみたい。知らないものをたくさん見て、経験して、感性を磨きたいですね」。

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