静かな農村のタイニンに別れを告げ、我々は再び活気あふれる大都市ホーチミンへと戻ってきた。4日目の旅路は、西洋医学のフロンティアと東洋の知恵が交錯する、実に思索深い1日となった。
午前中に訪れたのは、緑豊かな森の中に古い木造建築が佇む「整形外科機能回復センター」である。歴史の重みを感じさせるその施設は、新病院への移転を控えていることもあり、どこか閑さけた空気が流れていた。ここで我々は、義足の緻密な作成工程を見学するという貴重な機会に恵まれた。

さらに、現地で奮闘するJICA協力隊員(作業療法士)の方との交流という、かけがえのない体験が待っていた。隊員が語る言葉は、我々の胸に強く突き刺さるものであった。
「日本の当たり前を押し付けることは、本当の国際協力とは言えません」
自分たちがいなくなった後も、現地の人々だけで持続できるか。文化や生活に根ざした自立支援になっているか。どれほど素晴らしい先進技術や物品を導入しても、去った後に誰も使わなくなってしまえば意味がないのだ。
「自分の育った世界を飛び出し、多様な価値観に触れることは、人生において測り知れない価値をもたらす」
そう語る隊員の眼差しに触れ、学生たちは将来の理学療法士として、そして一人の人間としての「世界の広げ方」を教わったようであった。

午後は一転して、ベトナム古来の知恵が息づく「ホーチミン市伝統医学病院」へ。
館内にはどこか心を落ち着かせる薬草の香りが満ちていた。ここではベトナム特有の草木を用いた多彩なアプローチや、独特の物理療法を見学することができた。薬草を用いた治療法のバリエーションの豊富さに驚嘆する一方で、学生たちの鋭い視線はひとつの違和感を捉えていた。

「急性期の痛みを和らげる対処療法は素晴らしいけれど、退院後の生活や動作に踏み込むリハビリが不足しているのではないか……?」
タイニンの病院で「生活を再構築するリハビリ」の尊さを学んだからこそ抱くジレンマである。しかし同時に、大都市の病院には圧倒的な数の患者様が押し寄せており、一人ひとりに時間をかけることが困難であるという厳しい現実も目の当たりにした。
医療システムの課題、インフラの限界、そして需要と供給のギャップ。個人ではどうにもならない大きな壁に突き当たったとき、理学療法士として何ができるのか。自らの知識をアップデートするだけでなく、社会やシステムの仕組みにまで思考を巡らせる、極めて深く成熟した1日となった。
いよいよ旅も終盤。明日、彼らはどんな答えを胸に抱いて帰国の途につくのだろうか。

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