ベトナム研修もいよいよ最終日を迎えた。この5日間、自らの「当たり前」を打ち砕かれ、葛藤し、たくましく成長してきた学生たち。彼らが最後に訪れたのは、この国の過去と現在が鮮やかに交錯する二つの場所であった。
午前中に訪れたのは「戦争証跡博物館」。
館内に展示された数々の写真や資料は、かつてこの地で起きた戦争の痛ましい記憶を静かに、しかし力強く物語っていた。医療やリハビリテーションを学ぶ身として、障害や傷を負った人々の歴史に直面した学生たちの表情は真剣そのものであった。「命を守り、生きる力を支えるとはどういうことか」——教科書の上だけでは決して学べない、重厚な問いが彼らの胸に深く刻み込まれた。
重い歴史の静寂を抜けた午後は、一転してホーチミンのエネルギーが爆発する「ベンタン市場」へ。

色鮮やかな雑貨、積み上げられた南国フルーツ、そして威勢の良い店員たちの声。市場の熱気に包まれながら、学生たちはベトナム最後の自由時間を思い思いに楽しんだ。
「これ、いくらになりますか?」
「日本の感覚で買い物しようとすると、全然値切り交渉ができない!」
ここでもまた、ちょっとした文化の違いに笑い合いながら、旅の思い出やお土産を両手いっぱいに抱え込む。初日のバスの中で見せた緊張感はすっかり消え去り、そこには異国の空気すらも自分のものとして楽しむ、しなやかで頼もしい学生たちの姿があった。
夕闇が迫るホーチミンの街を後にし、夜、我々はタンソンニャット国際空港から深夜便の飛行機に乗り込んだ。
機窓の外に消えていく南国の灯りを眺めながら、学生たちは何を思っていたのだろうか。
「当たり前」など、世界のどこにも存在しない。
言葉が通じないもどかしさも、環境が整わない悔しさも、すべてを受け入れて目の前の人と向き合うことの大切さを知った。このベトナムの地で培った「多様な価値観を理解する土壌」は、これから彼らが目指す理学療法士としての道において、かけがえのない財産となるはずだ。
常常の果てに掴み取った新しい自分を胸に、飛行機は漆黒の夜空を切り裂き、日本へと飛翔する。彼らの本当の冒険は、ここからまた始まっていくのだ。

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