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こんにちは、履正社国際医療スポーツ専門学校 広報部Mです。
本日から毎週水曜日、3回に渡って当ブログにお邪魔し、部谷(ひだに)祐紀先生の素顔にクローズアップするインタビューを掲載します。どうぞよろしくお願いします。
第1回目は、部谷先生がアスレティックトレーナーとして大切にしていることをうかがいました。
これまでたくさんの競技、現場に関わってこられた部谷先生ならではの至言が詰まっていますので、ぜひご一読ください。
[profile]部谷祐紀(ひだに・ゆうき) 1979年生まれ、広島県出身。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、はり師、きゅう師、管理栄養士。日本鍼灸理療専門学校卒業後、青山学院大学トレーニングセンターで研鑽を積む。2004年、トレーナー業の傍ら東京農業大学栄養科学科に入学。管理栄養士の資格を取得する。これまで関わった競技はラグビー、相撲、フィールドホッケー、スキー(アルペン男子日本代表)、男子バスケットボール (U-18男子日本代表)、ボート(日本代表)など多岐にわたる。なかでもボート競技では2011年より日本オリンピック委員会専任メディカルスタッフとして推挙され、日本選手団の一員としてロンドン、リオデジャネイロ、東京と3大会連続で参加した。2022年2月より本校へ入職。
目指すべきは、“選ばれ続ける”トレーナー。
――部谷先生は今年、本校に入職されたばかりですが、どんな授業を担当しているのでしょうか。
履正社高校陸上部でのアスレティックトレーナー実習のほかに、座学の「コンディショニングⅠ」(医療AT専攻学生対象)と「アスレティックトレーナー概論」(AT1年生対象)、実技寄りの授業「トレーニング実践」(AT2年生対象)を担当します。
――「日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー」を取得するには、実技だけでなく解剖学やコンディショニングといった多岐にわたる学科を修めますし、難関資格でもあります。先生ご自身はアスレティックトレーナー資格をどうやって取ったんですか。
中央競技団体からの推薦です。すでに現場で活動しているトレーナーが(各競技団体の)協会から推薦を受けたうえで講習会に参加し、受験資格を得るルートがあるんです。それから、試験に挑みました。ちなみに私は全日本相撲連盟からの推薦です。
――相撲! のっけから気になりますがあとで詳しくおうかがいするとして、先生がこれまでアスレティックトレーナーとして大切にされてきたことを教えてください。
私自身、これまでフリーランスのトレーナーとして、さまざまなチームや選手、クライアントと契約させていただきました。その中で大事にしてきたのは“選ばれ続ける”ということ。選ばれること自体も大変な道のりですが、一番目指すべきは“選ばれ続けること”です。
自分の仕事が認められてはじめて対価をいただける、対価に値しないとみなされたら、もう仕事は来ない。シンプルで厳しい世界です。選ばれ続ける人は何が違うのか。何が必要なのか。教科書にはない、現場で求められることを学生に伝えられたらと思います。
――“選ばれ続ける”には、たとえばどんなことが必要ですか。
実習担当の学生には、3つのことを大事にしてくださいといつも言います。1つは、とにかく誠実であること。挨拶ができる、時間や約束を守るといった当たり前のこと以外に、お礼や、ミスしたり間違えてしまった時、きちんとお詫びができることです。誠実さがなくて解雇されるトレーナー、誠実だから雇われ続けているトレーナーをこれまで何人も見てきました。“知識やスキルは素晴らしいけど、人としてダメだよね”だと、いずれ選ばれなくなります。自分自身もずっと心がけていることです。
――2つめは?
しっかり準備をすること。「(実習で)うまくできないのは準備、段取りが足りないから。できないことがあるなら、次の実習までに調べて準備しておいで」と学生には話しています。「こういうケガがあるかもしれないから予防策をはっておこう」「天気が崩れるかもしれないからこれを準備しておこう」など、あらゆることを想定し、考え、準備しておくことが大切です。準備をするから臨機応変に動けるのです。
――学生のノートを見せてもらったら、びっしりメモが書かれていましたが、それが関係しているんですね。そして、3つめは。
根拠を持って話し、動くことです。実際の現場でも「それ、根拠(エビデンス)はあるの?」とよく聞かれますから。
――根拠を持って話すのって、学生のうちはなかなか難しいですよね……。さっきも実習で、部谷先生が学生に「なぜスクワットを(選手に)やってもらったの?」と根拠をたずねる場面がありました。
スクワットを処方すること自体は間違いではなかったんです。ただ、「なぜスクワットを選んだのか」が言えないのでは、根拠を持って動いていることになりません。学生には最初はとにかく問診、視診、触診をして選手の情報をたくさん集めることを伝えています。そうすれば、「だからこうなっている」に気づくし、「じゃあこうしよう」ができるようになる。そうしてはじめて、「こういう理由でやりました」が言えるようになります。
AT実習にて、選手の身体状況を評価中。
――「選手からたくさんの情報を集めるために、コミュニケーションが必要」ともおっしゃっていましたね。
コミュニケーションは大切ですが、「選手とただ仲良くするためのコミュニケーションじゃないよ」とは言っています。たとえば、大事な試合を控えた前日に、選手が弱気になってしまい「体が痛い」「動きが悪い」などと不調を訴えたとします。そんなとき、「こうやったらちゃんと力が入るし、大丈夫だよね。いつも通りにできるでしょう? だから、明日は自信を持って行っておいで」と背中を押せる関係は、信頼と適度な距離感がないとダメなんです。関係が近すぎると選手が「だって痛いし……」と甘えてしまうこともありえますから。だから、選手とは慣れ合いにならないように、と伝えています。
――ほかに、先生が大切にしていることは。
これは私自身、大学時代の恩師・田中越郎先生(東京農業大学名誉教授)から学んだことですが、「相手がわかるように伝える」ことです。伝わらないのは自分の伝え方が悪いだけ。相手がスムーズに理解できるよう、言葉を使い分けないといけません。ドクターに説明するなら解剖学的な言葉が必要だし、監督やコーチとは競技内で使われる用語で話すようにする。選手や保護者には平易な言葉でかみ砕いて伝える。伝え方の工夫が大事だよ、と。今日も実習の最後、学生にそれぞれ担当選手の報告をしてもらいましたが、報告の「内容」だけでなく「(伝わりやすい)方法」もフィードバックします。
――方法とは、たとえば今日、先生が学生に「それは、解剖学的にはどういう状態?」とたずねていたようなことですか。
そうです。まずはスポーツドクターと話すことを想定しているので、その時に伝えるための方法です。ドクターと医学の言葉でコミュニケーションが取れないと「この人は勉強が足りていない」とみなされることもあります。ドクターと信頼関係を築くため、同じ共通言語を用いて報告ができるように指導しています。「ちょっと痛い」「ここが痛い」といった報告はありえませんから(笑)。
――学生は答えるのに苦戦していましたね。2人とも、頭がパンクしている感じでした(笑)。
たとえば「膝が曲がらない」状態があったとします。医学の世界では「膝関節の屈曲制限があります」と言えば伝わる。学生もその状態はわかっているし、屈曲や制限という言葉も知っている。それなのに言葉が出て来ないのは、事前練習をしていないから。相手に伝えるための準備も大切です。
――メディカルモードの言語がすぐに出るよう、実習でアウトプットさせるんですね。
そうです。実習は練習の場だから、そのときはわからなくても、失敗してもいいんです。でも、調べて、考えて、次の準備をしようよ、と。プロの現場はトレーナーがドクターの言葉を理解し、選手にわかりやすく翻訳する必要だってある。トレーナーはドクターと選手の間をつなぐジャンクションであることが理想だと思っています。
――大切なこと、たくさんお話しいただきました。
まだまだありますけどね(笑)。でも、こういった基礎基本ができていれば、どんな場所でも重宝される人材になると思います。
ほかの先生方がどのように進めていらっしゃるかは、赴任したばかりなのでまだわかりませんが、私自身はこのスタイルでやっていこうと思っています。
部谷先生、ありがとうございました。
次回は、部谷先生のこれまでのトレーナー、医療者としてのキャリアについて。抱腹絶倒エピソードが満載です。ご期待ください。
<広報Mの取材MEMO>
今年2月に東京から大阪に引っ越したばかりの部谷先生。オフの日はどんな風に過ごしていますか?
「最近、鉄板を買ったので、週末は家族と鉄板焼きやもんじゃ焼きを楽しんでいます。せっかく大阪に来たので、たこ焼きとお好み焼きのおいしいお店も探索中です」。
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