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理事長だより

vol.91「『ほんまもん』に出会う」

「ほんまもんは、やっぱり強い」。

キング・オブ・ポップと称され、世界中の人々を熱狂させたマイケル・ジャクソン。2009年に亡くなってから17年。その生涯を描いた映画『Michael/マイケル』を観て、彼の歌や踊りの素晴らしさに改めて魅了されました。

リズム感あふれる見事な歌唱法、思わず見惚れるようなダンス、音楽だけでなく、ドラマチックな演出も楽しめるミュージックビデオなど、その圧倒的なパフォーマンスは世界中を驚かせました。「マイケル前、マイケル後」と表現する人もいるほど、音楽やダンスの世界に大きな影響を与えた存在です。

しかし、今回の映画を通して改めて興味を惹かれたのは、華やかな成功の姿だけではなく、あの独創的で類まれな表現は、何を見て、何を学び、どのように磨かれていったのか。そのことを考えてみたくなりました。

「世界最高の教育とは、達人たちの仕事を垣間見ること」。
マイケル・ジャクソンは、自伝『ムーンウォーク』の中でこう語っています。
彼は幼い頃から、兄たちと結成したジャクソン・ファイブの一員として舞台に立っていました。普通の子どもたちのように自由に遊ぶ時間は限られていましたが、その一方で、かけがえのない出会いに恵まれます。
ジェームス・ブラウン、ジャッキー・ウィルソン、サム&デイヴなどなど、時代を代表する一流のエンターテイナーたちです。自伝では、ジェームス・ブラウンの動きが、スポットライトが追いつかないほど速く魅了されたと記されています。

幼いマイケルは、彼らのパフォーマンスを舞台袖から食い入るように見つめていました。
歌い方や踊り方だけではありません。観客を惹きつける間の取り方、身体の動きと照明の関係、指先の表情に至るまで、細かく観察していったのです。

彼にとって、舞台袖は最高の教室だったのでしょう。
そして、彼は憧れの達人たちをただ真似たのではありません。優れた表現を吸収し、研究し、磨き上げ、やがて誰にも真似のできない自分自身のスタイルを生み出していきました。
学ぶことは、真似ることから始まっても、真似ることで終わらない。
一流の仕事に心を奪われた少年が、やがて世界中の人々の心を奪う存在になったのです。

彼の挑戦は、ステージの上だけにとどまりませんでした。
1980年代、アメリカで誕生した音楽専門チャンネルMTVは、音楽の楽しみ方を大きく変えようとしていました。
しかし当時、黒人アーティストの映像が十分に放映されないという壁がありました。
その状況を変える大きな転機となったのが、マイケルの『ビリー・ジーン』です。さらに『スリラー』では、歌とダンスに物語性や映像美を融合させ、ミュージックビデオを新しい芸術表現へと押し上げました。

彼の成功は、後に続くアーティストたちにも道を開きました。
かつて達人たちから学んだ少年が、今度は自ら新しい時代を切り開いていったのです。

マイケルが影響を受けたのは、舞台上の達人たちだけではありません。
フレッド・アステアやジーン・ケリーの映画、チャップリンの演技、マルセル・マルソーのパントマイム。美術館にも足を運び、クラシック音楽にも親しんでいたそうです。
さまざまな芸術に触れ、心を動かされ、その感動を自分自身の表現へと昇華させていったのです。

考えてみれば、私たちの身近にも、さまざまな感動があります。
心に残る書物にふれる。音楽に聴き惚れる。スポーツの見事なプレーに息をのむ。あるいは、誰かのひたむきな活動に心を打たれるなど。
その瞬間、何かが胸に響きます。
それがいつ、どのような形で自分の力になるのかは、誰にもわかりません。

世界中の人々を魅了したマイケルにも、かつては誰かに魅了されていた少年の日々がありました。
舞台袖で目を輝かせていたあの少年は、まだ自分の未来を知らなかったはずです。
胸に響く「ほんまもん」との出会いは、まだ知らない自分との出会いなのかもしれません。

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