
「Be Water, My Friend(友よ、水になれ)」
これは、1970年代に世界中で活躍したアクションスターであり武道家のブルース・リーが残した有名な言葉です。
ブルース・リーと聞いても、みなさんには少し遠い存在かもしれません。しかし、映画『燃えよドラゴン(Enter the Dragon)』の主人公と言えば、聞いたことがある人もいるでしょう。
実は、この映画が日本で大ヒットした頃、私はちょうど今のみなさんと同じくらいの年齢でした。当時はブルース・リー旋風が巻き起こり、多くの若者が彼に憧れていました。もちろん私もその一人です。
私たちは、彼の華麗なアクションに夢中でした。
けれども今振り返ると、私の記憶に残っているのはアクションだけではありません。
人生を歩む中で、思い通りにならないことや、自分を変えることの難しさを経験するたびに、彼が残した言葉を思い出すようになりました。
「コップに注げばコップの形になる。ティーポットに注げばティーポットの形になる。水は静かに流れることもでき、激しく打つこともできる。友よ、水になれ」
水は不思議な存在です。
どんな器にも合わせて形を変えます。しかし、水であることは変わりません。
静かに流れることもできますし、ときには岩を削るほどの力を見せることもあります。
ブルース・リーが伝えたかったのも、そんな生き方だったのではないでしょうか。
周囲に流されるのではなく、状況に合わせて柔軟に変わること。そして、必要なときには力強く前へ進むことです。
東洋人である彼自身も19歳でアメリカへ渡り、人種の壁や偏見に向き合いながら道を切り拓きました。大きなけがに苦しんだ時期もありましたが、そのたびに立ち止まることなく、新しい道を探し続けました。
人は、自分の力だけでは変えられないことに出会います。
思い通りにならないこともあります。
それでも前へ進まなければならないとき、私はふとブルース・リーの言葉を思い出します。
水は形を変えます。しかし、水であることをやめるわけではありません。
「Be Water, My Friend」。
若い頃には憧れのスターの言葉でした。
けれども今は、人生の折々に思い出す言葉になりました。
半世紀以上の時を経た今もなお、その言葉は静かに流れ続けています。
【参考資料】
『Be Water My Friend 友よ、水になれ 父ブルース・リーの哲学』(シャノン・リー著、亜紀書房)







