「本気で何かに打ち込む姿を見ると、人は感動するのだと思います」。
映画『国宝』で主演を務めた吉沢亮さんが、先月の日本アカデミー賞授賞式で語った言葉です。簡潔でありながら、どこか心に残る一言でした。
昨年、この作品を観た人はいるでしょうか。私は久しぶりに映画館に足を運びましたが、気がつけば物語の中に深く引き込まれ、歌舞伎の世界に没入していました。上映が終わったあともしばらく余韻から抜け出せず、その場を立ち上がるまでに少し時間がかかったことを覚えています。
歌舞伎という、普段の生活の中ではなかなか接する機会の少ない世界に、ほんの一端でも触れたことで、その奥行きの深さに思いを馳せました。長い年月の中で受け継がれてきた日本の伝統芸能が、いまもなお多くの人の心を魅了し続けている。そのことを、改めて実感できた体験でした。
この作品は、興行収入二百億円を超え、実写日本映画として歴代一位を記録しました。長く破られなかった『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』の記録を更新したことでも話題となりました。当初は、この題材と上映時間から、ここまで広く支持されるとは予想されていなかったそうです。
しかし公開後、評価は静かに広がっていきました。観た人の言葉が次の人へとつながり、その積み重なりの中で、多くの人のもとへ届いていきました。派手さではなく、テーマそのものが持つ力で広がった点に、この作品の本質があり、「クールJAPAN」を感じずにはおれません。
物語は、異なる背景を持つ二人が、同じ芸の道を歩み、競い合いながら長い年月をかけて高みへと至る姿を描いています。主演の吉沢さん、そして横浜流星さんは、ともに確かな実績を持つ俳優ですが、歌舞伎の経験はなかったとのことです。それでも役に向き合うために、一年半にわたり稽古を重ね、古典作品にも挑んだといいます。
共演した高畑充希さんが「血反吐を吐くほどの努力をしていた」と語っているように、役づくりの過程は決して容易なものではなかったようです。観た人の多くが「熱量に圧倒された」と感じたのは、完成された演技の見事さだけでなく、歌舞伎そのものの背景にある時間の積み重ねや、ひとつのことに向き合い続ける姿勢が、作品を通して伝わってきたからなのだと思います。
この映画は数々の賞に輝き、吉沢さんは最優秀主演男優賞を受賞しました。スピーチの中で、「芸の道の厳しさや、その先にある喜びに少し触れられた気がする」と語っていた言葉には、取り組みの中で見えてきたものへの実感がにじんでいました。
人が何かに深く向き合っている姿には、不思議と人の心を引きつける力があります。それは言葉で説明される前に、どこかで感じ取られているものなのかもしれません。
こうした作品に触れたとき、人はそれぞれの感じ方を持ちます。強く心を揺さぶられる人もいれば、静かに何かが残る人もいる。受け取り方は違っても、その背景にある「ひたむきに向き合う姿」に、自然と心が向いているようにも感じられます。
私も最近、歳をとったためか、人が一生懸命に何かに打ち込む姿に触れたとき、ついつい涙もろくなり、困っています。
◆







