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理事長だより

vol.73「『GUTS!』──最後まで諦めない、その心で挑んだ決勝戦」

 2025年4月6日18:00、東京ドーム。

 眩しいばかりのナイター照明、熱狂の余韻の残るスタジアム──伝統の阪神×巨人戦が終わったばかりの空間に、新たな火花が散ろうとしていました。

 第26回全国高等学校女子硬式野球選抜大会・決勝戦。
 履正社高校女子硬式野球部の相手は、女子野球界屈指の強豪・神戸弘陵学園。
 現地で応援する私の胸には、期待と不安が入り混じっていました。

 吹奏楽部、チアリーディング部、選手のご家族、そして学校関係者──皆で一丸となって声援を送ります。
 選手紹介で名前を呼ばれた瞬間、選手たちは勢いよくグラウンドへ飛び出し、笑顔の中に漲る闘志を見せてくれました。

 そして、プレーボール。

 円陣を組む彼女たちは、屈託のない笑顔を浮かべながら叫びます。
「私たちは、ついにここまで来たんや。あとは、普段通りやるだけや!」。

 試合は1回表、緊張感あふれる立ち上がり。エースが丁寧に投げ抜くも、間一髪のプレーで2点を先制される苦しい展開に。4回には三塁打と犠牲フライで1点を返し、随所でチャンスをつくるも、あと1本が出ない――。逆に、神戸弘陵学園チームにタイムリーが出て追加点を奪われ最終回まで進行。追いすがる気迫を見せながらも、スコアは1対5。惜しくも準優勝となりました。 

 しかし、その瞬間、選手たちの顔に涙はなく、やりきった笑顔が広がっていました。
 そこにあったのは、敗北ではなく、誇りの証。


「特別な才能」より、「特別な絆」──それが、私たちの強さ。


 チームをここまで導いたのは、橘田恵監督。女子野球日本代表をW杯7連覇へと導いた名将の一人です。

 彼女がめざしたのは、「一人のヒーロー」ではなく「全員が主役になる野球」。
「力のない代ですが、日替わりヒロインでチーム一丸となっています」。
 試合後、橘田監督は、選手たちを誇らしげにそう評しました。

 誰か一人が目立つのではなく、互いを信じ、支え合うことでしか辿り着けなかった決勝の舞台。それこそが、今年の履正社の強さだったのです。

 2025年、選手たち自らが掲げたスローガンは、「GUTS!」。

 どんな場面でも諦めず、チーム全員で火の玉のように戦い抜く。
 一つひとつのプレーで誰かの心を揺さぶる。最後の瞬間まで、自分たちの野球を貫き通す。その強い意志が、込められた一言なのです。


未来を照らす、一投一打。──女子野球を背負う覚悟。


 現在、女子野球の競技人口は全国で約3000人。
 着実に増加はしているけれど、まだ少ないからこそ、選手一人ひとりの存在が、未来への火種となる。

 橘田監督は、選手たちにこう語りかけます。

「あなたたちのプレーを見て、小学生が野球を始めるかもしれない。
あなたたちが輝けば、中学生が夢を持てるかもしれない。
その一球に、“未来”が乗っている」。

「“お姉ちゃん、かっこいいな”と思ってもらえる存在になろう」。

 決勝戦はテレビ中継やネット配信を通じて、多くの人に届けられました。
 きっと、どこかで、少女たちが憧れの眼差しを向けていたことでしょう。

 スローガン「GUTS!」を胸に、彼女たちはまた新たな一歩を踏み出します。

 本気で挑み続けた先にこそ、掴める“未来”がある。
 新たなシーズン、新たな物語へ。

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