「えっ、Aさんのこと知っているのですか?」
初めて話した人と、そんな会話になったことはありませんか。
共通の知り合いがいると分かった瞬間、場の空気がふっとやわらぐ。
初対面のはずなのに、どこか安心感が生まれる。
そんな小さな経験に、人と人との縁の不思議さを感じることがあります。
人のつながりについて、「6次の隔たり」という考え方があります。
友達の友達をたどっていくと、6人以内で世界中の誰とでもつながる、というものです。
この発想は、1920年代、ハンガリーの作家カリンティ・フリジェシュが小説の中で描いたことに始まります。
世界は思っているよりも小さいのではないか――。
そんな直感が、やがて研究の対象となっていきました。
1960年代には、アメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラムが実験を行います。
遠く離れた、見知らぬ人物に手紙を届けるため、
「知っていそうな人に回してください」と託していく方法です。
すると、目的の相手に届いた手紙の多くが、平均5〜6人ほどを介して到達したと報告されました。
つまり、世界は無数の人でできていながら、
実は数人の橋渡しでつながっているかもしれない。
この現象は「スモールワールド現象」と呼ばれています。
そして現代。
SNSの普及に よって、この距離はさらに短くなりました。
スマートフォン一つで世界とつながることができる時代。
皆さんにとっても、それは当たり前の風景になりました。
けれど、つながりやすくなったからこそ、あらためて感じることがあります。
人との関係は、「つながれるかどうか」よりも、
「どう関わるか」で深まっていくのではないかということです。
履正社での日常も、きっとそうです。
同じ教室で過ごす仲間。
同じグラウンドで汗を流す仲間。
同じ目標に向かって努力する仲間。
それぞれの時間が重なり合う中で、人と人との関係は形づくられていきます。
こうした関係は、すぐに価値が見えるものではないかもしれません。
けれど時間が経ったあと、ふとした場面で思い出す。
何気ない一言に励まされていたことに気づく。
そんな形で、人との縁の意味を知ることがあります。
世界がどれだけ便利になっても、
人と人が向き合う時間の価値は、変わらないのだと思います。
だからこそ、今ここで出会っている人との時間を、
大切に重ねていってほしい。
その積み重ねが、これから先の人生を、確かなものにしてくれるはずです。
【参考資料】
■ダンカン・ワッツ
辻 竜平・友知政樹 訳
『スモールワールド・ネットワーク』(ちくま学芸文庫)
■渡邉究
『すごすぎる数の図鑑』(KADOKAWA)
■総務省
「ネットワーク型サービスの背後にある考え方」
(平成23年版 情報通信白書)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc232c00.html







