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理事長だより

vol.81「準備は、自分を支えてくれる」

「大事な場面になると、どうしても緊張してしまう」
 みなさんの中にも、そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。これはきっと、年齢に関係なく、生きていく中で何度も向き合うことになる悩みです。

 先日、履正社校友会主催の講演会で、本校卒業生であり、プロ野球オリックス・バファローズで長く活躍されたT-岡田(岡田貴弘)さんのお話を聞く機会がありました。
 質疑応答の時間に、硬式野球部の生徒がこんな質問をしました。

「試合で緊張します。緊張しない方法を教えてください」

 その問いに対して、T-岡田さんは迷うことなく、こう答えました。
「準備をしっかりすることですね」

 とてもシンプルな言葉ですが、私はその答えに強くうなずきました。

 私たちの脳は、「先が読めないこと」や「何が起こるかわからないこと」に対して、不安や緊張を感じやすいと言われています。
 野球なら「次はどんな球が来るのか」。
 発表の場なら「うまく伝わるだろうか」「どう思われるだろうか」。
 こうした“まだ見えていない未来”が、緊張の正体なのかもしれません。

 だからこそ、練習やリハーサルを重ねて、「まったく分からない」を「少し分かる」に変えていく。
 完璧でなくてもかまいません。未知の部分が減るだけで、人は不思議と落ち着き、自信を持てるようになります。

 以前、ある企業の方からプレゼンテーションを受けたことがあります。とても分かりやすく、説得力のある内容だったので、終了後にそのことを伝えると、「実はすごく緊張していて、直前まで何度も練習していたんです」と笑顔で話されました。
 堂々として見えたその裏側にも、入念な準備がありました。

 もちろん、どれだけ準備をしても、失敗することはあります。
 T-岡田さんも、講演の中でこう話していました。

「失敗を重ねることで、人は成長します。失敗から学ぶことがたくさんあるからです」
 そして、「失敗を恐れて何もしないことこそが、成長を止めてしまう」とも。

 たとえ準備不足でうまくいかなかったとしても、その経験は次につながります。
「次は何を準備すればいいのか」が、はっきり見えてくるからです。

 準備は、特別な才能ではありません。
 やろうと思えば、誰でも、今日から始めることができます。
 不安を小さくし、失敗を経験に変えてくれる力ーーそれが準備です。

 みなさんも、これから様々な場面で緊張することがあるでしょう。
 そんなときこそ、アスリートのように「できる準備はすべてした」と言えるところまで、準備を重ねてください。
 その準備こそが、いざという場面で、必ず自分を支えてくれるはずです。

【追記】
 今回、T-岡田さんと直接お話しする中で、とても誠実で温かい人柄を感じました。飾らない言葉の一つひとつから、これまで自分を厳しく律し、努力を重ねてきた歩みが伝わってきました。あらためて、彼が履正社の卒業生であることを誇りに思います。

 また、現役時代の登場曲「カーニバル」は、「準備はできたか? Ladies」という言葉から始まります。
 このフレーズは、試合に向かう自分自身を鼓舞するための言葉だったのではないでしょうか。

【参考資料】
『緊張を味方につける脳科学』茂木健一郎著 河出新書

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