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理事長だより

Vol.25 「努力はウソをつく」

みなさんご存じ、フィギュアスケートの羽生結弦選手は「努力はウソをつく」とテレビのインタビューで語っています。「えっ!意外」と思いますよね。一番努力をした人が優勝できるはずだが、勝てない時は勝てないと言うのです。でも「そのウソ自体は無駄にはならない。ウソをつかれるからこそ、もっと違う努力をしないといけないし、努力の正解というものを見つけることが大切」と続けています。二度もオリンピックで金メダルをとったアスリートが達した境地、その重みを感じました。「ドキッ」とさせられる言葉です。

本校の学生トレーナーがサポートする履正社高等学校剣道部は、男子校時代から通算すると学園の歴史と同じ、来年の2022年に創部100年を迎えます。そんな同校で最も歴史を誇る剣道部が、1月下旬に岸和田市総合体育館で開催された第67回大阪高等学校剣道新人大会で、男女同時に優勝。揃って団体戦で全国大会に出場するという、100年の歴史の1ページに刻まれる快挙を達成してくれました。男子は90校、女子は51校の大阪府代表として、先ずは3月21日の第14回近畿高等学校剣道選抜大会に出場し、女子が3位、男子はベスト8、また1年生の岡本ゆかり選手が女子優秀選手に選ばれました。引き続く3月26日からの第30回全国高等学校剣道選抜大会に於いて、上位進出は果たせなかったものの、全国の舞台で実によく戦ってくれました。学生トレーナーも大忙し。縁の下の力、ありがとう。

躍進の要因は何か、部を率いる吉田裕太監督に聞いてみると「自分は稽古をつける!という上から教えるというのではなくて、自分自身の稽古のつもりで日々の練習に臨む」「監督が一緒に稽古している姿を見せることによって、選手一人ひとりが自ら考え、気づき、自発的に行動するように指導する」という方針で、練習も長時間行うのではなく残りたいものは残る。多くの場合、剣道や武道は朝練をやるそうですが、朝練もやらない。選手たちは自分で考えて素振りをしたり、道場を走ったりと自ら鍛え練習する。あくまでも選手の自主性に任せるというのです。

聞いていて、同校硬式野球部岡田龍生監督の著作「教えすぎない教え」 を想起しました。岡田監督が自らの指導理念を著した同書にも、やはり選手が自発的に練習に取り組む事が根本的に重要と紹介されています。選手たちが自分の頭で考え、必要と思う練習を自らチョイスする環境を整えているそうです。

共通しているのは、選手たちを信頼してその自己決定を尊重するという指導者の姿勢です。その視線の先に、羽生選手の「努力はウソをつくが、そのウソ自体は無駄にはならない。ウソをつかれるからこそ、もっと違う努力をしないといけないし、努力の正解というものを見つけることが大切」という境地と通底するものを見据えているに違いないと思います。そしてそれは私たちにとっても永遠のテーマではないでしょうか。

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