サッカーコース
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こんにちは、履正社国際医療スポーツ専門学校 広報部です。
今年5月、ブラジルで「第24回夏季デフリンピック競技大会」が開催されました。
そのサッカー女子日本代表として選出されたのが、サッカーコース1年生の杉本七海さんです。
七海さんは、6歳上のお兄さんの影響でサッカーを始め、お父様の指導のもと練習に励んでこられました。今回は4月25日に東大阪市役所で開催された激励会の後に行った七海さん、お母様の愛子さん、お父様の延央さんへのインタビューを掲載します。
七海さんのサッカー人生を振り返るとともに、デフサッカーの魅力について伺いました。
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(写真:激励会後、東大阪市役所庁舎前にて。左から、愛子さん、七海さん、延央さん)
――幼少期は、お父様がサッカーを指導されていたんですね。
(延央さん)はい、そうです。もともと七海は、兄の練習や試合の付き添いでよく私たちとグラウンドへ行っていました。そんな子たちが、結構いたんですよね。それならいっそのこと、女子チームを作ろうと思い立ったのが始まりです。練習だけでなく、高槻や八尾などあちこち試合にも行きました。
(七海さん)父に指導を受けながら、小学生のころは石切FC、中学時代は八尾ビオーネ、高校時代は大阪桐蔭高校サッカー部に所属してサッカーを続けてきました。
――履正社へ進学を決めた経緯を教えてください。
(七海さん)卒業後の進路を考えた時、色々な学校の資料請求をしました。その中に履正社のパンフレットもあったんです。気になって見学に行ったら、男子と一緒に練習できることを知りました。
(延央さん)小学生までは男の子たちと練習して試合にも参加できますが、中学にあがると別のチームに分けられます。年齢が上がるにつれて一緒にプレーするのは難しくなるんですよね。そうなると物足らなくなってきて(笑)。その点履正社は、一緒にプレーできる環境にあったので、すごくいいなと思いました。
――サッカーコースは、履正社FCと履正社CLUBの2チームありますが、どちらの練習に参加されているのですか?
(七海さん)履正社CLUBです。紙本先生は、面白いし優しいです。
(愛子さん)すごく楽しいみたいですよ。高校までは勝つことが優先で、そのためにひたすら練習をするという環境下でしたが、今は楽しみながらプレーができているようです。
(七海さん)それに皆うまいので、自分にとってすごく良い練習環境だなと思います。
――国際試合の出場は、今回のデフリンピックが初めてですか?
(愛子さん)中学生の頃に、韓国、中国との試合を経験しています。デフリンピックは今回が初出場でした。
(延央さん)2017年、日本はアジアチャンピオンになっているんです。七海もちょうどケガから復帰した頃で、1試合だけですが出場の機会がありました。
――ケガをされていたんですね。
(愛子さん)右足の前十字靭帯を切ったんですよ。それからは中2、中3、高1と3回にわたって手術をしました。最後は、左足の靭帯を右足に移植する手術でした。何回も挫折を味わっていると思います。
(七海さん)始めはケガのこと自体、あまり理解できていなかったですね。でも2回目の時は、もうサッカーを続けるのは無理かもしれないと思いました。
――ケガに苦しんだ時期、支えになったものは何でしたか。
(七海さん)「辞めれば終わり。でも続ければ、まだいけるかもしれない」。そう考えることで乗り越えてきた感じですかね……。その繰り返しだったと思います。
(延央さん)入院中は、(元なでしこジャパンの)千葉園子選手に力を貰ったんちゃうか。たまたま同室だったんですよ。
(愛子さん)その病室は、合宿所みたいな雰囲気でしたね(笑)。ラグビー、アメフト、柔道の選手の方もいらっしゃいましたから。皆さんと励まし合いながら過ごしていたと思います。
――今、足の痛みはいかがですか?
(七海さん)もう大丈夫です。
(愛子さん)専門学校でも、マッサージなどをしていただけるそうですね。
――鍼灸学科の実習がありまして、決められた日程に学生と教員がトレーナールームで選手のケアをしています。
(七海さん)練習後、鍼(はり)やお灸、マッサージを受けられるのはありがたいです。
サッカーコースでは、鍼灸学科による鍼灸ケアやマッサージを受けられます。
――これまでも、ずっと健常者の方と練習をされてきたんですか?
(延央さん)はい、練習中は補聴器を付けるので特に支障はありません。
(七海さん)でも雨が降ると、ちょっと大変ですね。
(愛子さん)そうやね。生活防水はついているので多少の汗は大丈夫ですけど、雨はさすがにだめなんですよ。改良されて良くはなっているんですが。
(延央さん)雨が降れば、途中で外します。そこからはもう声は入ってこないです。
――一切、声は聞こえなくなるんですね。
(延央さん)そうです。それにデフサッカーの公式戦では、補聴器をはずさなければいけません。ほとんど聞こえないので、選手同士、手話や指文字を使ってコミュニケーションを取っています。声かけもできませんし、風の吹く音やボールを蹴る音も聞こえません。視覚的な情報だけを頼りに、状況を判断してプレーします。
(七海さん)音が聞こえない分、身体に覚えこませることは特に意識して練習していますね。父と試合などの動画を見ながら「ここにボールがある時は、どう動く?ここが空くとどうなる?」という感じでボールや選手の動きをイメージして、それを試合中に体現できるよう繰り返し練習しています。
――監督やコーチ、スタッフの方とは、どのようにコミュニケーションをとるんですか?
(愛子さん)デフリンピックの時は、監督はろうの方だったんですけど、コーチ、キーパーコーチ、トレーナー、メンタルトレーナーの皆さんは健常者の方なので、通訳の方も同行されています。
――激励会でもお話にあがりましたが、デフサッカーの普及にも力を入れておられるんですか?
(愛子さん)そうです。協会からも普及活動をしてほしいと言われています。関東圏は本当にデフサッカーが盛んなんですよ。関西はまだまだで。
(延央さん)学生までは関西にいても、社会人になるタイミングで関東へ移る選手もいます。関東はアスリート雇用のある企業がわりと多いんですよね。仕事を続けながら、サッカーを続けられる環境です。今年も3名ほど関東へ就職しました。あとは、デフの選手の方だけで形成されるサッカーチームもいくつかあるみたいです。大阪は、男子で1チームしかありません。
(愛子さん)この間、テレビ番組でもデフサッカーが取り上げられていました。元サッカー選手の前園真聖さんが、耳栓をしてプレーするというものでしたが、やはりとっさに声が出ていましたね。サッカー経験者でも、感覚が全然違うようでした。
(七海さん)パラリンピックは広く知られていますが、デフリンピックの知名度はまだまだ低いです。デフの方の活動が、届いてほしいと思います。
――プレー中はコミュニケーションが強く求められますね。一度観てみたいです。
(愛子さん)きっと、びっくりしますよ。本当に静かですから。私も韓国戦や中国戦の時応援へ行きましたが、別世界のようです。
(延央さん)審判もホイッスルは使わず、旗だけを用います。
(愛子さん)あと、拍手の時も手は叩きません。デフの皆さんにとって、拍手はこれなんです。両手を顔の横まで持ち上げて、手首を回して手のひらをひらひらと動かします。”目で見て拍手をしていることが分かること”が大切なんですね。
――デフサッカーの魅力、より多くの方に広まってほしいと思います。
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その後、行われたデフリンピックの試合結果はこちらからご覧ください。
https://www.jfa.jp/news/00029669/
初戦で杉本さんは先制ゴールを奪い、大量得点へとつなげる大活躍を見せました。
また帰国後、杉本さんは8月に大阪府の「感動大阪賞」、9月に「大阪スポーツ賞」の優秀選手賞を受賞しました。おめでとうございます!
9月25日に行われた贈呈式。
これからも、杉本さんの活躍を楽しみにしています!