こんにちは、履正社国際医療スポーツ専門学校 広報部Mです。前回に続き、サッカーコースのブログにお邪魔し、紙本天平先生のインタビューを掲載します。
第2回は先生の過去のほろ苦い経験や、試合にかける想いについてお伺いしました。
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「試合に出すことが、頑張っている人への自分なりの誠意」。
――前回のインタビューで「苦い経験」とおっしゃっていましたが、どんなことがあったんですか。
卒業後、(当時サッカーコースの教員だった)伊奈新太郎先生に紹介いただき石川の強豪ジュニアチームでコーチをしていたのですが、そこで鼻をへし折られました。「社会人とはこういうことか」と。サッカーの指導だけでなく、社会人としての立ち居振る舞いなど、すべてが未熟で。ビジネスメールの書き方すらわかっていませんでした。「パソコン基礎」の授業を必修化してもらったのはこういった経緯からです。
――そうだったんですね。
実家を離れ、知らない土地で知らない人と仕事をし、子どもたちや保護者の方とコミュニケーションを取る……想像以上の大変さがありました。自分の良さ、本来のキャラクターがまったく出ず、「こんなはずじゃない」と。結果的に1年で辞めてしまいました。学生には、こういったことがないように。そう思う気持ちはあります。学校でどれだけ優等生で、何も問題がなくても、いざ社会に出るとどうしてもうまくいかないことはある。そういったギャップを少しでもなくして、ピッチの中でも外でも、自分らしくふるまえるようになってくれたらと思います。
――先生のお話の続きとして、ジュニアチームでのお仕事の後はどうされたんですか。
職場に辞意を伝えた後、大阪に戻ろうと準備を始めました。仲のいい先輩がいるチームに履歴書を送るため書類に封をして出そうとしていたところ、学校から電話がありました。伊奈先生がお辞めになるということで、声をかけて頂いたんです。僕自身、いつかは母校に戻って後輩を指導したいという気持ちがあり、「30歳ぐらいになったら雇ってください」と冗談交じりで話していたんですが、「えっ、もう?」とびっくりしました(笑)。
――すごいタイミングですね!
伊奈先生からのお電話で、「後任に紙本はどうだと高祖先生が推薦されている」と。これを聞いた時は、自分がやってきたこと、通ってきた道は間違っていなかったんだ、認めてもらえていたんだと感じられた。ひとつ夢が叶い、使命感が芽生えた瞬間でした。
――教える側になっていかがですか。
入職してすぐの頃は先生方に大目玉を食らうこともありましたが(笑)、のびのびとやらせてもらっています。ただ、サッカー指導の面ではまだまだ課題があります。高祖先生は経験豊富なのはもちろんのこと元ゴールキーパーで、コーチングや言葉がけが明確。一方、僕はフォワード出身で、役割的に指示を受けて動くことも多く、しかも感覚派なので、言語化がなかなか……。「こう来るから、こう!」みたいなタイプで(笑)。もっと指導技術を磨き、学生に多くを与えられるようにならないと、と思っています。
――あの……。さっき学生にこっそり紙本先生のことを聞いたら「とても細かく見てもらえる」って、言ってましたよ。
えっ、そうなんですか!
――(取材メモを見ながら)例えば「ゲーム中、誰かがミスしたときも『今のはここがこうだったから、こうなった。だから、次はこういう風にしてみよう』と、具体的に話をしてくれる。とてもわかりやすい」と。それだけでなく、「次はどうする?と、選手自身も考えられるように話をしてくれることもある」とも。ほかには「目配せが細かくて、こんなところも見ているのか、と思ったことがある」とか。
へぇ……自覚ないです(笑)。
履正社CLUB、練習中の一コマ。チームにはマネージャーもいます。
――あと、お話を聞いた学生さんは口をそろえて「紙本先生は試合には全員出られるようにしたいと言ってくれるので、がんばろうと思えます」と。
そうですね、履正社CLUBの監督は高祖和弘先生ではありますが……試合に関しては、技術レベルにもよりますが1年間の中でひとり1試合、必ず先発で出すというのを目標にしています。
――それはなぜですか?
これも自分の経験からなのですが、僕は学生時代、そんなにサッカーが上手くないと思っていました。でも、高祖先生は試合に出してくれたんです。とてもありがたかったですし、中身の濃い2年間を過ごさせてもらいました。僕はフォワードとして、足の速さだったり、持久力があったり、裏に抜けるのが得意といった持ち味を試合に出るためにアピールしていました。当時の僕のサッカーのモチベーションは「試合に出ること」だったんです。試合のない週がとても長く感じるほどでした。その一方で、自分より技術があるけど、ポジション等の関係もあってなかなか試合に出られないメンバーもいて。スポーツではよくあることですけど、そういう仲間を目の当たりにしてきたことも影響していると思います。だから、毎日ちゃんと練習して技術を上げれば、1年生でも試合に出るチャンスを用意したい。小さい頃からずっと続けてきた“サッカーのある人生”が、このサッカーコースで終わってしまうかもしれない学生たちに悔いのない2年間にしてほしいんです。
――試合を大切にしているんですね。
スタメン(スターティングメンバー)で出ると、集合写真に映るんです。それだけで記録にも記憶にも残る。それが頑張っている人に対しての、指導者としての自分なりの誠意だと思っていて。選手もスタメンで出るとすごく頑張ってくれます。結果を残せばなおさら。試合に出してよかったとこちらも思うし、たとえ期待に応えられなくても試合経験を積むことでモチベーションも上がり、試合メンバーに入ろうと努力するから結果、層も厚くなる。チームとしてはメンバーが流動的にはなりますが、「試合に出る」ことで得られるものを選手に促したいんです。
6月、2022年シーズンの社会人リーグが開幕。一段と気合が入ります。
――試合に出ると、学生の変化ってあるものですか。
変化していきますよ。はじめは緊張したり、ミスを恐れたりしがちですが、試合を重ねていくことで、自分に課せられた役割をこなすようになる。試合当日、僕の想像を超えるプレーをしたら、いい準備をしてきたんだなぁ、と感心することもあります。
――紙本先生は試合に向けて、学生とどんな準備をするんですか。
個人とチームの目標を提示しながら、リーグ戦の戦い方をミーティングします。リーグ開幕前は「試合まであと何週間」など準備、調整を意識づけしています。試合に出るための自分たちの立ち位置を「自覚」させるんです。
――「自覚」ですか。
自覚がないとやっていけないと思うんです。僕が社会人になって鼻をへし折られたのも、自覚が足りなかったからだと今となってはわかります。自分自身のサッカーは今、どうなのか。思ったようにできているのか、下手なのか。そういったことを都度、自覚してほしいですね。
次回は最終回。紙本先生のこれまでのサッカー人生を振り返っていただきました。
<広報Mの取材MEMO>
紙本先生、オフの日は何をしていますか?「最近、引っ越したばかりで、今は片づけ三昧です(笑)。あとは……同期を集めてサッカーやフットサルをしたり。サッカーする側になると視点も変わるし、やっぱり楽しいんです」。