我々は普段、知らず知らずのうちに自らが築き上げた「当たり前」という温室の中で暮らしている。しかし、その常識という壁は、一歩外に出れば実にあっけなく姿を変えてしまうものだ。理学療法学科の学生たちを乗せた飛行機は、関西国際空港の滑走路を力強く飛び立ち、一路、南国の風が吹くベトナムへと向かった。8月24日、我々の「常識をひっくり返す」学びの旅が始まったのである。

約5時間の飛行を経て降り立ったホーチミン・タンソンニャット国際空港。タラップを降りた瞬間に包み込まれた熱気は、まるで巨大な蒸し器の蓋を開けたかのような迫力であった。しかし、本当の旅はここからである。我々は大型バスに乗り込み、カンボジア国境近くに位置する街「タイニン」を目指して、約2時間半の陸路を進んだ。
車窓の風景は、都市の喧騒から次第に緑豊かな農村地帯へと移り変わっていく。ゆらゆらと揺れるバスの中で、学生たちの表情には長旅の疲れとともに、どこかソワソワとした心地よい緊張感が漂っていた。
「先生、道路の脇を牛が歩いています」 「そういえば、さっきから信号を見かけませんね」
日本の街並みとはまったく異なる風景を前に、学生たちは早くも自分の中の「日常」が揺らぐ感覚を味わっていたようだ。
そんな我々の胃袋と長旅の疲れを優しく癒やしてくれたのが、本場ベトナムの「フォー」であった。立ち上る香草の爽やかな香り、透き通ったスープに浮かぶ真っ白な米粉の麺。おそるおそる箸を伸ばし、一口味わった学生たちの顔にぱっと笑みがこぼれる。

「すごくおいしい! でも、日本のうどんやラーメンとは全然違いますね」
器にお好みのハーブを入れ、ライムをキュッと絞る。そこには「麺類とはこういうものだ」という過去の固定観念を入れる隙間などない。目の前にある未知の美味しさを、ただ素直に受け入れる心地よさがあるばかりだ。
自分の「当たり前」は、世界の「当たり前」ではない。 タイニンの心地よい夜風に吹かれながら、学生たちは異文化という冒険の第一歩を踏み出した。この旅が彼らの視野をどのように広げ、どんな成長をもたらすのか。波乱と発見に満ちた2日目の物語も、どうぞお楽しみに。
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