こんにちは、柔道整復学科教員のAです。
以前、あるテレビ番組で、
「人体の中には、器具・道具の名前がついた部位がたくさんあるので調査してほしい」
という視聴者の要望に応えて、実際に調べてみる、という企画がありました。
「え?体の中に道具?」
でも、解剖学を学んでいくと、
確かに“道具の名前”がついた部位はたくさんあることに気づきます。
さて、あなたはいくつ思い浮かぶでしょうか?
解剖学用語の中には、
形や役割が、身近な器具・道具に似ていることから名付けられたものが多く存在します。
ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。
■ 槌骨(ツチ骨)
耳の中にある小さな骨です。
名前の由来は、槌(ハンマー)。
音の振動を最初に受け取り、次へ伝える様子が、
槌で打つ動きに似ていることから名付けられました。
■ 砧骨(キヌタ骨)
こちらも耳小骨のひとつ。
砧(きぬた)とは、打撃を受け止める台のこと。
振動を受け止め、次の骨へ渡す役割が、作業台のイメージと重なります。
■ 鐙骨(アブミ骨)
耳小骨の最後を担当する骨です。
鐙(あぶみ)とは、馬に乗るときに足をかける道具。輪のような形をしており、
振動を内耳へ伝える構造が、鐙の形に似ていることからこの名前がつきました。

■ 鋸筋(前鋸筋・後鋸筋)
肋骨の外側についている筋肉です。
筋の形が、鋸(のこぎり)の歯のようにギザギザしていることから「鋸筋」と呼ばれています。
「切る筋肉」ではなく、形が鋸に似ていることが由来です。
■ 楔状骨
頭蓋骨の中央にある重要な骨。物を固定するときに使う楔(くさび)に、形と役割が似ていることから名付けられました。
■ 錐体(側頭骨錐体部)
「錐(きり)」とは、穴をあけるための道具。錐体は、先が尖った円錐形をしていることからこの名前がついています。
■ 鋤骨
鼻中隔をつくる薄い骨です。鋤(すき)という農具に形が似ていることが由来です。
■ 鈎(鉤)
有鈎骨鈎や鉤状突起などに見られます。「引っかける」「支える」という役割が、鈎(フック)の働きとよく似ています。
■ 鎌状間膜(鎌状靱帯)
「鎌(かま)」は、草や穀物を刈る道具。鎌状間膜は、弓なりに湾曲した形が鎌に似ていることからこの名前がついています。骨だけでなく、膜や靱帯にも道具由来の名前があるのが面白いところです。
医学的には、形や役割が、身近な器具・道具に似ていることから名付けられた名称というのが一般的な考え方です。
解剖学は、「覚える量が多い」「名前が難しい」と思われがちです。でも、なぜこの名前なのか、何に似ているのかを知っていると、形・位置・役割が頭の中に浮かびやすくなります。
前の由来を知ることは、解剖をただ暗記するのではなく、「理解する」ための大切なヒントになります。
次に解剖書を開いたとき、いくつ「道具」を見つけられるでしょうか?







