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引退して、しばらく経ったころ。
朝はゆっくり起きられる。
放課後も、時間がある。
でもな、ある日ふと気づくんよ。
「……次、何を目指せばええんやろ。」
これまでの毎日は、分かりやすかった。
大会に向けて勝つ。
レギュラーを取る。
タイムを縮める。
記録を伸ばす。
ゴールが見えてた。
せやから、多少しんどくても頑張れた。
でも引退した瞬間、
その“分かりやすいゴール”が消える。
地図が急になくなったみたいな感覚や。
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ある生徒が、こんなことを言うてたらしい。
「目標がないって、こんなに怖いんですね。」
この言葉、ほんまリアルやと思う。
部活ってな、
自分を動かす理由をくれる場所やった。
「今日はやる気ないな」って日も、
集合時間があったら行くしかない。
仲間がおったら、サボれへん。
でも引退したら、
急に“自分で自分を動かさなあかん世界”に変わる。
これが、地味にしんどい。
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ある先生はこう言ってた。
「引退後は、急に大きな夢を決めなくてええ」って。
いきなり
「将来の目標は?」
「5年後どうなってたい?」
とか聞かれても、正直ピンと来えへんよな。
さっきまで“明日の練習”が目標やったんや。
そんな急に、人生のゴールなんか描けへん。
せやからな、
次は“夢”じゃなくてええ。
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「毎日机に向かう」
「生活リズムを整える」
「体を動かし続ける」
「誰かの話をちゃんと聞く」
そんな小さな目標でええ。
部活のときもそうやったやろ?
いきなり全国優勝から始まったわけちゃう。
今日の練習をやりきる。
昨日より一本多く振る。
その積み重ねやったはずや。
目標ってな、
最初から立派な形で存在するもんちゃう。
動きながら、育っていくもんや。
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ある指導者は言うてた。
「目標がない時期もある。その期間を悲観しなくていい」って。
これ、ほんま大事や。
目標がない=ダメ
ちゃう。
目標がない時間は、
次の目標を考える準備期間や。
土を耕してる時間みたいなもんや。
まだ芽は出てへんけど、
ちゃんと次のための時間になってる。
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あんたな、もう知ってるはずや。
毎日コツコツ積み重ねたら、
ちゃんと前に進めるってことを。
しんどい練習も、
終わりが見えへん走り込みも、
積み重ねたら、ちゃんと力になったやろ?
その“継続力”は、
まだちゃんとあんたの中に残ってる。
ただ今は、
使う場所が変わっただけや。
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焦らんでええ。
今はまだ、霧の中みたいでもええ。
遠くが見えへん日があってもええ。
でもな、足元の一歩は踏み出せる。
その一歩が、
また次の景色を見せてくれる。
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目標は、探すもんやない。
動きながら、育てるもんや。
引退しても、
あんたの“前に進む力”は消えてへん。
今はまだ、スタート直後や。
ゆっくりでええ。
でも止まらんと、いこか。







