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「なあタマノスケ、オレだけまだ進路決まってへんねん……どうしたらええんやろ」
この言葉、タマノスケは何回も聞いてきた。
それも、元気そうに見えるやつほど、ぽつりと小さい声で言うんよな。
周りを見たら、
「もう決めたで」
「○○行くらしいで」
「将来は△△やって」
そんな話が飛び交ってる。
その中で、自分だけが立ち止まってる気がして、
置いていかれてるような気がして、
気づいたら焦って、不安で、夜にひとりで考え込んでまう。
でもな。
タマノスケは、はっきり言いたい。
それって、めちゃくちゃまっとうな状態やで。
むしろな、
それだけ真剣に「自分の人生」を考えてるってことや。
流されて決めてへん証拠や。
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ある先生が、こんな話をしてくれたことがある。
授業終わり、誰もいなくなった教室で、
ひとりの学生がぽつりと声をかけてきたらしい。
「みんなが将来の方向を決めていく中で、
自分だけ何も見えてへん気がするんです」
「やりたいことも分からへんし、
向いてることも無い気がして……」
その学生はな、
“迷ってること”そのものを、
「ダメな自分」やと思い込んでた。
でも先生は、まずこう言ったそうや。
「決まってへんことは、悪いことちゃうよ」
「今は、考えてる途中なだけや」
否定も、結論も、急がせへん。
ただ一緒に、これまでの経験を振り返った。
何が楽しかったか。
どんな時に人と関わってきたか。
しんどかったけど、頑張れたことは何か。
そうやって話していくうちに、
その学生はふと、こう言った。
「……人と関わること、嫌いじゃないかもしれません」
そこから少しずつ道が見えてきて、
最終的に福祉系の進路を選んだそうや。
あとになって、その学生はこう言ったらしい。
「時間をかけて考えていいって言ってもらえたのが、
いちばん救いでした」
タマノスケは、その言葉を聞いて思った。
人はな、答えを急かされるほど、
自分を見失ってまうもんなんや。
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また、別の学生の話もある。
進路のことで、
自分の気持ちと、保護者の意見の間で揺れてた子や。
「親はこう言ってるけど、
オレは正直、違う道に進みたい」
「でも、それ言ったら裏切るみたいで……」
そう言って、ずっと黙ってた。
その時、先生はこう伝えた。
「どうなっても、保護者は味方でいてくれる」
「せやから、少しくらい反抗してもええ」
「自分の気持ちから逃げんと、生きなさい」
その学生は勇気を出して、自分の意志を伝えた。
簡単やったわけやない。
でも今は、納得した表情で、自分らしく毎日を過ごしてるそうや。
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進路ってな、
最初から「正解」が用意されてるもんちゃう。
進んだ先で、
「この道でよかったな」
って、自分で意味をつけていくもんや。
実はな、
“やりたいことが最初から決まってる人”のほうが少ない。
多くの人が、
迷って、止まって、悩んで、
それでも少しずつ進んでる。
だから今、
「進路が決まってない」
「何がしたいかわからへん」
そう思ってるあんたへ、タマノスケはこう言いたい。
迷ってるってことは、
ちゃんと自分の人生に責任を持とうとしてる証拠や。
焦らんでええ。
立ち止まってもええ。
比べんでええ。
でもな、ひとつだけ。
心がちょっと動くほうに、
一歩だけ踏み出してみ。
その一歩が、
数年後の自分の背中を、
きっと静かに支えてくれるで。







