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「オレ、別に必要とされてないんちゃうかな…」
夕方のグラウンドで、そんな声をぽつりと聞いたことがある。
タマノスケはその言葉が、胸に刺さって忘れられへんかった。
試合に出られへん悔しさ。
チームの中心に立てないもどかしさ。
“支える側”にまわったとき、人はふと、自分の価値が見えにくくなる。
けどな――
タマノスケは、はっきり言いたいんや。
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「君がおらんかったら、チームは今の形にはなってへんで」
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これはただの励ましとちゃう。
本気でそう思ってるからこそ言える言葉なんや。
ある先生は、控えの選手にこんなふうに声をかけてた。
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「チームはピラミッドやない。“輪”や。
誰が上とか下とかじゃなくて、みんなで回って成り立ってる。
ひとり欠けたら、輪はガタガタする。
目立つ・目立たんは関係ない。
君の存在が、今このチームを支えてるんや。」
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この言葉を聞いたとき、タマノスケは心の奥がじわっと熱くなった。
たしかに、野球は9人で戦うスポーツやけど、
ほんまの意味で“チーム”をつくってるのは、
その9人だけやない。
ベンチで声を枯らしてくれるやつ。
試合前に黙って道具を揃えてくれるやつ。
誰より早く来てグラウンドの状態を見てくれるやつ。
疲れてる仲間に、そっとドリンク出してくれるやつ。
そういう“小さな行動”が、実は一番チームを支えてる。
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そして、こんな先生もおった。
「他の人がどう思ってるかは分からん。
でも、少なくとも“私は君に価値があると思ってる”。
一人でも、自分のことをそう信じてくれる人がおるんやったら、
その気持ちを支えにして進めばええ。」
その言葉を聞いたとき、控えの選手は下を向いたまま涙を落としてた。
「誰にも言えんかった気持ちを、誰かが分かってくれた」
そんな安堵の涙やったんやと思う。
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タマノスケは、ずっと思ってる。
“支える立場”は裏方なんかやない。
むしろ、チームの基盤をつくる一番大事な役割なんや。
光の当たらないところで頑張ることは、孤独になるときもある。
誰にも気づかれへん日もある。
それでも続けられるのは――
自分の中にある、“誰かのために動こう”という優しさが消えへんからや。
その優しさは、ちゃんと誰かの心に届いてる。
気づいた仲間は、胸の中でこう思ってる。
「あいつ、おってよかった」
「あいつの頑張り、ほんまにありがたい」
声にはならんかもしれん。
言葉にしてくれへん日もある。
でも、確かに思われてる。
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タマノスケは、支える側の君にこう伝えたい。
「光が当たってなくても、君の価値は消えへん。」
「誰かが見てる。誰かが気づいてる。誰かが救われてる。」
それだけで、十分すぎるくらい意味があるんや。
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自信をなくしたときは、思い出してほしい。
君の存在が、チームの輪を回してる。
君の行動が、誰かの背中を押してる。
君の優しさが、チームの力になってる。
その事実は、誰にも消されへんで。







