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タマノスケ新章6話【ほんまにしんどい時誰がそばにおった?】

夏の終わり。
グラウンドの空気が、どこか寂しく感じる季節。
一日の練習が終わって、夕焼けに染まるベンチに腰を下ろしたタマノスケは、ぼんやりと空を見上げていた。

最近、チームの雰囲気がちょっとギクシャクしてた。
負けが続いて、イライラがたまって、誰かのちょっとしたプレーにみんな過敏になってしまう。
「なんであいつ、あんな態度なん?」
「チームワークって言うわりに、バラバラやん…」

そんな空気に飲まれて、タマノスケ自身も、何が正しいんかわからんようになってた。
仲間の一言にモヤモヤしたり、自分の態度にあとで後悔したり。
「ほんまに、このチームで大丈夫なんやろか…」
そんな不安が胸の奥で膨らんでいく。

その日、練習後。
タマノスケはみんなが帰ったあとも、ひとりグラウンドに残った。
ベンチに座り、両手で顔を覆う。

「……もう、無理かも」

声には出してないけど、心の中でそうつぶやいてた。
自分の気持ちがわからんくなるくらい、しんどかった。
誰に相談したらええかもわからんし、正直、逃げたくなる気持ちもあった。

そのときや。
背後から、ペットボトルがスッと差し出された。
冷えたスポーツドリンク。

「ほら、お前がこういう時、絶対泣くの知ってたから、買っといた」

そう言って隣に座ったのは、ユウスケやった。
何も言わんでええ。ただそこに座ってるだけ。
でも、それがたまらんくらい救いやった。

無理に「頑張れ」って言わん。
「大丈夫やろ」って軽く流すわけでもない。
ただ、沈黙を共有してくれる。
それだけで、胸の中が少しずつ軽くなっていった。

タマノスケは思った。

「しんどい時に、笑わせてくれる仲間」
「落ち込んでる時に、何も聞かんと横にいてくれる仲間」
「“頑張れ”って言わずに、ただ隣にいるだけの仲間」

そういう存在がおることって、めちゃくちゃ大きい。
勝った喜びを分かち合う仲間も大事やけど、負けた悔しさを受け止めてくれる仲間の存在は、もっと心にしみる。

試合に勝つとか、監督に褒められるとか。
そういう“見えること”もたしかに大事や。
でもな、それ以上に“見えへんところ”で自分を支えてくれる仲間。
その存在こそが、一番大きな支えになるんやと思う。

人はひとりやと、弱い。
でも「そばにおるで」って言ってくれる人がいるだけで、立ち上がれる。
それが仲間の力や。

タマノスケは、沈む夕日を見ながら心の中でつぶやいた。

「仲間ってな、光の中だけのもんやない。
 影の中で寄り添ってくれる存在のことを言うんや」

涙は出えへんかったけど、心の奥がふっと温かくなった。
そして思った。

「こんな仲間に出会えたことに、感謝せなあかんな」

ユウスケがとなりにおったあの夕暮れは、タマノスケにとって忘れられへん瞬間になったんや。

また次、会おな。
タマノスケより。

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