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野球コース

タマノスケ新章5話 【あいつの喜びが自分のことみたいやった】

こんにちは、タマノスケやで。


今日はな、「仲間の喜びが、自分のことみたいやった」っていう、そんな話を聞いてほしいねん。

大会の決勝。
タマノスケは、その日、ベンチやった。理由は、ケガ。
プレーできへん悔しさは、正直めちゃくちゃあった。

「最後の大会やのに、グラウンドに立たれへんなんて…」
そう思った瞬間、何回あったか分からへん。
でも、チームの一員であることに変わりはない。
せやから、誰よりも声を出して、必死に応援してたんや。

そして、試合は終盤。
9回裏、2アウト満塁。同点。

監督の声が響いた。

「ユウスケ、代打行けるか?」

「はい!」

同級生で、ポジションも似てて、ずっと張り合ってきたライバル。
誰よりも練習して、誰よりも声出して、チームの空気を引っ張ってきたやつ。
ほんまに泥くさくて、熱くて、まっすぐで――
タマノスケは、そんなユウスケの背中を、じっと見つめてた。

グラウンドに向かっていくその背中に、拳をギュッと握りながら、心の中でつぶやいた。

「頼んだぞ…ユウスケ」

カウントは2ストライク1ボール。
球場全体が静まり返る。息を呑む時間。

――カキーン。

打球は、鋭くライト前へ。走者がホームに返って、サヨナラ。
歓声が一気にグラウンドを包み込んだ。
ベンチもスタンドも、涙と笑顔であふれてた。

でも、タマノスケはその場で固まってた。
見えていたのは、ガッツポーズを決めるユウスケの笑顔だけやった。

その瞬間、なんでかわからんけど、涙が勝手にこぼれてきた。

「…やったな」

拍手も歓声も、聞こえへんくらい。
ただただ嬉しくて、胸の奥がグッとなった。

「なんでやろ…自分が打ったわけやないのに…
 なんで、こんなに心が震えるんやろ…」

その答えは、ふと口から出た言葉に詰まってた。

「あいつの喜びが、自分のことみたいやってん」

試合が終わって、帰り道。
ユウスケが、ぽつりとつぶやいた。

「お前が一番喜んでくれてたの、ベンチから見えてたわ。
 あんなん、めっちゃ泣きそうなった」

タマノスケは照れくさくて、笑ってごまかした。

「いや、泣いてたけどな。普通に。こっちは。」

昔の自分は、正直に言えば、
「なんで自分やないんや」って思ってたと思う。
「出たかった」し、「目立ちたかった」し、「ヒーローになりたかった」。

でも、この日だけは、ほんまに違った。

あいつのヒットが、自分のヒットより嬉しかった。
あいつのガッツポーズが、自分のホームランより誇らしかった。

それってきっと、もう「チームメイト」とか「ライバル」とか、そんな言葉やなくて。
本気で支え合ってきた“仲間”になれてたからなんやと思う。

仲間ってな、悲しいときに寄り添ってくれる存在やけど、
「嬉しいときに、心から一緒に喜べる存在」でもあるねん。

自分が悔しいときに、一緒に泣いてくれて、
自分がうまくいかんときに、背中押してくれて、
そんで、誰かが輝く瞬間に、自分のことのように喜べる。

それが、“ほんまもんの仲間”なんちゃうかな。

その夜、布団に入ったタマノスケは、ふとつぶやいた。

「また、あいつと野球したいな」

ユウスケと一緒にグラウンドを駆けまわった時間。
泣いたことも、笑ったことも、全部がタマノスケの宝もんや。

たとえ今は別々の道を歩いてても、
「喜びを分かち合える仲間」って、一生もんや。
この先、どんな道を選んでも、
あの日の気持ちを、ずっと胸に持っていたいと思ったんや。

仲間って、やっぱり最高やな。
タマノスケより。

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