卒業生・教員インタビュー

須藤 悠太さん
2001年、熊本県生まれ。小学校からラグビーをはじめ、桃山学院高校時代のポジションはロック。本校2年次にTOEIC 970点越えをマーク。在学中は国際アスレティックトレーナー専攻を履修し、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー試験に合格
- スポーツ外国語学科 2022年卒業
- NTTドコモレッドハリケーンズ大阪通訳兼トレーナー
(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
海外を拠点に
夢を形にできる学びがありました。
- 入学の決め手は何でしたか。
- 「国立大学も合格していたので悩みました。ラグビーに関連する仕事に就きたいと考えていた中で、履正社なら卒業後のイメージがしやすいし、それがモチベーションになり勉強も頑張れると判断しました」
- 学生時代、大変だったことは?
- 「国際A T 専攻だったので、英語とアスレティックトレーナーの勉強の両立は正直大変でした。日によっては朝の9時半から夜8時まで授業があり、慣れるまで大変で。でも、仲間がいたから頑張れました」
- 「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪」でのインターンを経て、卒業後、通訳兼トレーナーとして正式採用されました。スポーツ外国語学科での学びは、実際の現場とどう直結していますか。
- 「在学時、『トレーニング・イングリッシュ』の授業に、(NTT ドコモラグビー部の) 南アフリカ出身のヘッドトレーナーがゲスト講師に来てくださり、通訳をする機会がありました。ケガ予防のセッションで、バランスボールを使ったメニューを教えてもらいましたが、そのときに聞いた単語やフレーズは、今も仕事で本当によく使います」
通訳の仕事は
待ったなし。
- 難関とされる日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー試験も、理論・実技試験ともに現役合格されました。
- 「10月に理論試験に合格後、12月から実技試験対策が本格化しました。同じ頃、ドコモラグビー部でのインターンもスタートし、試験対策で学んだことを実際の現場で活かせ、頭に入ってきやすかったです」
- 通訳として、トレーナーとして、どんな仕事をしていますか。
- 「入職してすぐは、スキャットという脳震盪評価ツールのベースラインデータの収集を任されました。英語の医療論文を日本語にしてメディカルチームにプレゼンテーションする機会をもらうなど、常に英語を磨ける環境です。通訳としてはグラウンドの内外問わず、突然ヘルプを求められます。外国人選手から携帯を渡され『宅配便の不在届けの対応をして欲しい』と頼まれたことがあり、スポーツだけでなく日常生活にまつわる英語のブラッシュアップも必要だと痛感しました。トレーナーとしても通訳としても中途半端にならないよう、努力したいと思います」
- 高校生にメッセージをお願いします。
- 「とてもアットホームな学科で、先生方がしっかり受け止めてくれます。目標を持って、豊かな時間を過ごしてください」

小池 隆太さん
2001年、大阪府生まれ。大阪府立金岡高校出身。高校時代、テニススクールで日本一の選手を育てたコーチの指導を受け、世界のコーチングに興味を持つ。
- スポーツ外国語学科 2022年卒業
自分が将来、
何をしたいか。
- 履正社のスポーツ外国語学科に入学した理由を教えてください。
- 「この学科のことを知るまでは大学に行くつもりだったんですが、よく考えると、その理由は何となく『みんな行ってるから』というだけでした。でも、自分が将来何をしたいかを本当に考えた時に、スポーツの資格が取れて、英語も勉強できるこの学校に進むのが一番後悔しない選択肢だと思いました。好きなスポーツを通して英語を学べるというのはすごく魅力的でした」
- 将来はどういう仕事に就きたいと考えていますか?
- 「テニスクラブや実業団で選手を指導したり、英語を使って国際的な交流にたずさわったりする仕事をしたいと考えています。コーチングの面でもマネジメントの部分でも、海外の最先端の情報を提供していきたいです」
- テニス界で、英語が話せればどんなアドバンテージがあると思いますか。
- 「日本で英語が話せる人はまだまだ少ないですし、スポーツは世界共通なはずなのに、向こうの情報を共有できていません。英語が話せるだけで、コーチングにせよ、マネジメントにせよ、将来の仕事の幅が広がるし、即戦力になれると思っています」
普通の会話が
聞き取れるように。
- 入学後、英語は上達していますか。
- 「半年経って、普通の会話のスピードが聞き取れるようになってきました。趣味で海外のスポーツの試合を観ると、大体実況が英語なんですが、そこで『あ、これ先生が言ってたやつ』っていう表現が本当にいっぱい出てくるので、他の言葉も関連付けて聞き取れるようになってくる。そういうことが起きています。実況や解説の人が何を言っているかがわかれば、試合の見方も変わってきますし。やっぱりスポーツと関連付けた授業をいつも受けているから、英語が入ってきやすいと思います」
- 学校の雰囲気はどうですか?
- 「自分の知っている普通の日本の学校とは全然違います。先生たちが海外の学校のアプローチで運営されているので、授業中も本当にフレンドリーにグイグイ来てくれるし、外国人の先生たちと、日ごろから本当に些細なことでも英語で会話できるから、質問がめちゃくちゃしやすいです。スポーツが好きで、英語が勉強したいという僕のニーズに全部応えてくれるので、毎日が本当に楽しいです」
※インタビューは本校在学時のものです

佐伯 絵美さん
2001年、香川県生まれ。神戸弘陵学園高校出身。高校時代は女子硬式野球部の投手として、4度の全国制覇を経験。本校では英語を学びながら女子クラブチーム「履正社レクトヴィーナス」の一員として野球を続けた
- スポーツ外国語学科 2022年卒業
クラスがチーム
みたいな感じです。
- 将来の夢を教えてください。
- 「世界で活躍する野球選手になりたいです」
- その夢を持つことになったきっかけは何ですか?
- 「小学校の時にオーストラリアに遠征して野球をさせていただく機会があって、海外にも野球をする環境があるんだと知ったことがきっかけです。向こうはプレースタイルや文化が全然違うところが面白いと思いますし、将来は女子野球を国際的に広めたいという思いもあって、そのためには英語を身につける必要があると思いました」
- 履正社のスポーツ外国語学科に入学した理由は何ですか?
- 「野球を続けながら、スポーツを通して英語が学べる環境だったからです。大学進学も考えましたが、英語と野球に専念できるところが魅力でしたし、スポーツ界は学歴ではなく実力と技術の世界なので、初めてこの学科のことを知った時から『あ、これが自分の求めている場所だ』と感じました」
現場で実際に使える
英会話の技術。
- 入学前と比べて、英語力が伸びたと思うのはどんなところですか?
- 「会話が徐々に聞き取れるようになってきました。映画とかを観ていても、これまでだったら『この単語知ってるかも』くらいだったのが、フレーズ単位で聞いたことある、授業で習ったことある、っていう風になって、聞き取れる範囲が広くなってきました。同時に話す方も、最初は単語だけ言っていたのが、少しずつ文章を作れるようになってきたと思います」
- 好きな授業は何ですか?
- 「選びきれないくらいですが、特に『フィジカル・イングリッシュ』の授業が好きです。スポーツのテクニックや指示の仕方、ミーティングの仕方などを学んで、それを英語で実践する授業なんですが、外に出てみんなで身体を動かして英語を使うから、自分に身につきやすいと思います」
- 実際に履正社に入学してみて、どんな感想を持っていますか。
- 「テストのためだとか、資格を取るための勉強じゃなくて、これから先、スポーツ現場で実際に使える英会話の技術を学んでいるという実感があります。あとスポーツをしてきた人の集まりなので、クラスがチームみたいな感じです。助け合ったり、切磋琢磨したりしている感じがすごく好きです。勉強と野球の両立は大変ですが、とても充実した学校生活だと思います」
※インタビューは本校在学時のものです

佐藤 秀典 先生
1981年、東京都生まれ。10歳でオーストラリアに移住し、現地の高校を卒業後、帰国して通訳の道に。2015年からはラグビー日本代表、2016年からはプロラグビーチーム「サンウルブズ」の通訳を務め、ワールドカップをはじめ、世界の大舞台を数多く経験した。2020年4月、履正社国際医療スポーツ専門学校「スポーツ外国語学科」の学科長に就任
- スポーツ外国語学科 学科長
- 前ラグビー日本代表通訳
英語を話せる人が
優先される時代。
- ラグビー日本代表の通訳として、スポーツ現場における英語の重要性についてどのようにお考えですか?
- 「たとえばパソコンで、『ラグビー』と『rugby』を検索して、ヒット数を比べてみて下さい。『ラグビー』の検索件数は約6千万で、『rugby』は約6億。10倍の差があります。誰でも見られる無料の情報なのに、英語が読めない人は、読める人の10分の1しか情報を得るチャンスがないわけです」
- それはどれくらい不利なことですか?
- 「最先端のスポーツ科学を知るのに、その情報が翻訳されるのを待たなければいけないというのは、たとえばトレーナーにとっては大きなハンデですよね。どれだけ技術やスキルがあったとしても、英語ができない人は、それだけで世界から数年遅れを取ってしまう。実際、海外のコーチやトレーナーが持ち込んだ知識が、数年遅れで日本のスポーツ界のスタンダードになりますから」
- 最近はどの競技でも、外国人のコーチや選手、スタッフが多くなってきましたね。
- 「ミーティングが英語で行われることも珍しくありません。英語がわからないスタッフは、外国人コーチや選手がワーッと議論になったらついていけない。また、試合では、トレーナーは外国人の選手が倒れた時、即座にその選手と話して、コーチに状況を伝えなければいけないわけです。でもそこでカタコトでやり取りをして誤診や伝達ミスがあると、チームにとっては致命傷にもなりかねません。だからトレーナーも英語が話せる人が優先的に使われる時代です」
遅れを取るのは、
もったいない。
- 学校で学ぶ英語と、スポーツの現場で使う英語は違いますか?
- 「現場ではとっさの判断が求められることや、英語で強く要求するという場面が出てきます。専門用語も、スラングもたくさんあります。そういう環境に普段からどれだけ身を置けているかが、『使える英語』をマスターする鍵だと思います。テスト前に暗記して、テストが終われば忘れるだけの勉強では、実践的な英語は身につきません」
- これからの若者に期待することは?
- 「今は選手だけでなく、指導者やトレーナーも世界と戦わなければならない時代です。なのに英語が話せないというだけで遅れを取ってしまうのは、もったいなさすぎる。『自分は英語を話せるようになって、何をするんだ』という具体的な目標を持って、スポーツ界で羽ばたいてほしいと思います」

クレイグ・マクラレン 先生
1984年ドイツ生まれ、スコットランド・セントアンドリュース育ち。学生時代は陸上競技やサッカーなど多くのスポーツに親しむ。大学院卒業後、JETプログラムに参加し2014年に来日。山口県内の中学校、高校で ALTを務める。2019年、本校入職
- スポーツ外国語学科教員
ミスを恐れず、
会話を楽しんで。
- スポーツ外国語学科のカリキュラムの特徴を教えてください。
- 「プロスポーツや医療の世界で外国の方とスムーズにコミュニケーションを取れるようになることが最終的な目標です。日本スポーツ協会認定のアスレティックトレーナーやコーチングアシスタントといった各種資格や、医療国家資格に関連した英語も学べます。また、それぞれの現場で実際に使える語彙や会話を想定した教材を使って、習得を目指します」
- 具体的にどんな英語を学べますか。
- 「英文法、TOEICといった英語の基礎はもちろん、スポーツを題材に『聞く、読む』だけでなく『話す、書く』などのアウトプットを行います。教材はすべてオリジナルで、スポーツや医療、ビジネスの現場で実際に使われる『生きた英語』に特化しています。たとえばスポーツビジネスならミーティング中に自分の意見を伝えたり相手に意見を求めるとき、どう話すか。ほかにもスポーツセンターの受付の人が電話対応するときや、パーソナルトレーナーが『どんな身体になりたいか』をお客様にヒアリングするときの会話など、リアルな状況を想定しています。プロチームで活躍しているトレーナーの方にお話を聞き、現場で求められている英語表現をリサーチし、授業に反映することもあります」
- 学科の強みは何ですか。
- 「プロの世界に直結していることです。佐藤秀典学科長をはじめ、スポーツ現場に携わるスタッフがいるのでプロチームとの接点もあり、最新の情報やコネクションがあることも強みです」
伝わったかどうかが
コミュニケーションの要。
- スポーツ外国語学科には、どんな学生が入学してきますか。
- 「スポーツが好きなのはもちろんですが、国際化が進むスポーツ業界の現状を知り、英語の必要性に気づいている学生が入学しています。彼らの多くは将来、通訳やトレーナーなど、英語を武器に国内外のスポーツ現場に就くことを志望しています」
- 英語を学ぶにあたり、先生が学生に大切にしてほしいことは何ですか。
- 「前提として日本人はミスを恐れがちなのと、自分の英語力を気にし過ぎだと思います。そんな懸念をまず捨ててほしい。自分の言いたいことをシンプルに言い換え、伝わったかどうか、コミュニケーションができたのかを大事にしてほしいです。英語力を磨くのはそのあとだと思います」
特別インタビュー

リーチ マイケル さん
1988年、ニュージーランド生まれ。留学生として15歳で札幌山の手高に入学した。東海大在学中の08年にラグビー日本代表デビュー。13年7月に日本国籍を取得し、14年4月、日本代表主将に就任。19年ワールドカップ日本大会でもチームを率い、史上初のベスト進出に大きく貢献した。190㎝、105㎏
- ラグビー日本代表主将
一番大事なのは、
環境を変えること。
- リーチさんはラグビー日本代表のキャプテンとして、日本のスポーツ界の英語力をどう感じていますか?
- 「世界のスポーツ国の中で、日本人ほど英語が話せない国はありません。他のアジアの国々はどこも話せるのに、本当に不思議」
- そのことでどんな影響がありますか?
- 「日本のスポーツ界は西洋に比べて10年以上、遅れていると言われています。スポーツ科学、心理学、分析、コーチング……。特にコーチングは、指導者が日本の情報しか知らないから、自分が教わってきた指導をそのまま繰り返す傾向が強いと思います。根性練ばかりやらされてきた人は、自分も根性練をしてしまう。そのサイクルを断ち切るためには、海外で今行われていることを日々、学ばなければいけません」
- 逆に日本のスポーツの強みは?
- 「今言ったことと矛盾するようですが、根性は大事です。忍耐力は日本が世界一。でもそれだけでは勝てません。その前に技術や科学やコーチングの力を高めないと」
世界はまだまだ、
気づいていない。
- そのための英語ですね。では語学を学ぶために最も必要なことは何でしょうか?
- 「私自身、日本に来る前に2年間、日本語を勉強しましたが、向上したなと思えたのは、日本で生活するようになってからです。一番大事なのは、環境を変えることです」
- 環境を変えて飛び込むことで、どんなことが得られるでしょうか。
- 「例えば私はニュージーランドでもプレーしましたが、個人的に日本人のトレーナーを雇っていました。なぜなら、向こうのトレーナーは仕事が大雑把で、痛いところがあってもそこを10分マッサージして終わり。17時が来たらみんな帰ってしまう」
- パートタイマーのようですね。
- 「でも日本人のトレーナーは30分でも40分でも、そこが治るまでやり続ける。ケガも理論に基づいて治療してくれる。チームメイトがそれを見て、『自分も診てくれ』と殺到するようになり、そのトレーナーはチーム専属スタッフとして契約を打診されました。世界はまだまだ、日本人トレーナーの優秀さに気づいていません」
- 海外に出ることで、日本人の強みに気づくこともあるわけですね。
- 「違う文化を学ぶことで、人としてもすごく成長できる。話せない人の気持ちもわかって、優しくなるし(笑)。良い社会人になれると思います」

ウーリッヒ・クルツ さん
1959年、南アフリカ生まれ。87年に来日して以来、30年以上にわたって日本の青少年の英語教育に携わり続けている。93年にベルリッツ最優秀講師を受賞し、2003年にはベルリッツ・ジャパン副社長に就任。14年からは南アフリカ共和国スポーツ親善大使を務めている
- スポーツ外国語学科ディレクター
- 元ベルリッツ・ジャパン副社長
英語を武器に、
世界のステージへ。
- これからスポーツの世界で働く人にとって、英語力はどれほど重要ですか?
- 「日本の国土は世界の陸地の0.3%です。日本語しかできない人は、その中でしか活躍できません。もし英語を話せれば、活躍のフィールドが世界中に広がるチャンスがあるのです。でも今、日本のスポーツ指導者、トレーナー、セラピスト、アスリートのほとんどが0.3%の中にとどまっています。これは非常にもったいない。英語さえできれば、日本人は世界中のプロや大学のクラブで仕事ができるし、最先端の知識や技術、文化を直接学べるはずです」
- グローバル社会と言われて久しいですが、ほとんどの日本人は今も英語が話せません。これはどうしてでしょうか。
- 「日本の英語の教材の多くは、日本語と英語で書かれています。でも、英語を学ぶ時は英語だけを使うことが重要です。翻訳が入ると学習効果はあまりない。これは世界では常識ですが、いまだに日本では『英語を日本語で学んでいる』のが現状です。英語が母国語でない先生も多い。だから日本人は英語を話せるようにならないのです」
- 日本にはネイティブの講師がレッスンしてくれる英会話学校はたくさんあります。
- 「1週間に数時間、学校で勉強しても、とても足りません。たとえば中国や韓国の若者の英語力は今や日本人を大きく上回っていますが、彼らは毎日2時間以上、英語を勉強しています。英語を身につけたければ、毎日やることです。履正社のプログラムは、毎日英語を勉強できる。これが大事です」
夢を持っていれば、
上達度が全然違う。
- 留学すれば英語力は上がりますか?
- 「1年間海外の文化の中で生活するだけで、英語力はすごく伸びます。学校の時間だけではなく生活も英語ですから。言葉だけでなく文化も同時に学ばなければ、本当の意味で英語に馴染むのは難しいでしょう」
- 海外留学をする日本人の数は、昔に比べて減っているそうです。
- 「多くの日本人が、40歳くらいで上のキャリアを目指そうとなって初めて、英語力が必要だということに気づいて困ります。でも、その時にはもう遅い。じっくり英語を学ぶ時間はありません。一方で若いうちから世界のステージで活躍するという夢を持っていれば、英語の上達度も全然違います。夢を持った若者が、履正社から世界に羽ばたくことを強く期待しています

下沖 正博 さん
1975年、宮崎県生まれ。98年に NTT ドコモラグビー部に入部し、08年現役を引退。トップリーグに初昇格を果たした 11年にコーチに就任し、13年~ 15年まで監督を務めた後、18年より GM としてチームへ復帰し現在に至る
- ラグビーリーグワン
- NTTドコモレッドハリケーンズ
- ゼネラルマネージャー
「英語を活かして成長したい」
そんな専門人材を求めています。
世界で勝つことを求められる今の日本スポーツ界で、
採用担当者が最も欲しがるのは英語が話せる人材だ。
プロスポーツ最前線の「リアルな声」を聞いた。
- 今、私がGMを務めるNTTドコモレッドハリケーンズには20人強のチームスタッフがいます。ヘッドコーチ、コーチ陣をはじめトレーナー、フィットネスコーチ、S&Cコーチ、メディカルスタッフ、アナリスト、通訳、マネジメントスタッフのディレクター、広報PR、総務の担当者です。
その20人強のうち、英語が話せる人間は3分の1くらいでしょうか。しかし、本来であれば全員が英語が話せる人材であることがベストです。なぜなら、ラグビーに限らず、日本のスポーツ界では、海外の指導者やコーチングスタッフが来日してチームの一員となる機会が、一昔前と比べても圧倒的に増えてきているからです。
近年、日本の競技力が上がってくるに従い、海外の国代表レベルのコーチ陣やスタッフ陣が、日本のクラブで働く機会が増えました。それにひもづく形で、海外の有名選手たちも日本にやってきています。レベルの高い指導者やスタッフのいる日本のリーグは、海外の選手たちにとっても魅力的な選択肢なのです。
ところが、そのような状況にも関わらず、国内には英語が話せるスポーツ人材はまだまだ不足しています。これは逆に言えば、スポーツ界で仕事がしたい人にとっては非常に大きなチャンスが目の前にあるということです。
採用の基準はまず、
英語ができるかどうか。
- そういう事情もあり、現在、我々がスタッフを採用する際に基準としているのは、まず「英語ができるかどうか」です。どれだけ経験や実績があったとしても、英語が話せないと難しい。同じ能力なら、英語が話せる人を優先します。
学歴が有利になるということもありません。難関大学を卒業していても英語ができないトレーナーと、英語ができる専門学校卒の優秀なトレーナーであれば、後者の方を100%採用します。
今は、どのセクションのスタッフであっても、専門性を有していることは当たり前です。しかし英語力があれば、その専門性がより活かされる。スポーツ界に限った話ではありませんが、英語を早い段階から自分の土台として身につけることができていれば、より付加価値の高い人材になれるのです。
実際、我々のチームの、ミーティングで使われている言語も英語です。さらに言えば、英語が使われるのは、ミーティングだけではありません。外国人コーチたちは試合に向けてベストメンバーを選び、戦略を練るため、ちょっとした立ち話の合間などにもチーム内の情報を集めていますから、たとえばトレーナーは、事あるごとに選手たちの心身のコンディションをコーチに聞かれます。そんな時、「通訳を呼んでくるからちょっと待って」とか、スマホや翻訳機械などを使ったりするわけにはいきません。コーチが「今、ここで」何を知りたがっているのかを英会話の中で的確に把握し、時には文法も脇に置いて、どれだけスピーディに正確な情報を提供できるかが問われるのです。
英語力が、
試合の結果に大きく影響する。
- 我々のチームには通訳が2人いますが、彼らがチーム内の英会話全てをカバーすることは難しいのが現状です。通訳なしでもカタコトで何とかなる時はいいのですが、そうはいかないことも往々にしてあります。たとえば選手の状態を外国人のコーチ陣とすり合わせる時は、専門用語が飛び交います。そこでトレーナーが報告した内容と実際の選手のコンディションにズレがあると、試合の結果にも大きく影響しかねません。コーチたちはチームを勝たせるために雇われ、日本に来ているわけですから、彼らと日々コミュニケーションを取る立場にあるスタッフの英語力は、とてもシビアな問題なのです。
そして日本は海外に比べ、まだまだスポーツ文化が成熟しているとは言い難い面があるため、実際、我々が求めている情報の多くは海外からもたらされます。コーチングやトレーニングの情報をインターネットで調べるにも、英語のサイトの情報量の方が、日本語のページに比べて桁違いに多い。英文でリアルタイムに情報を収集し、外国人コーチたちとダイレクトに会話できるスタッフが採用されていくのは、自然の成り行きではないでしょうか。
私は普段、スポーツビジネスに関わるチーム外の方々とも接する機会が多いのですが、やはり一度海外で働いたり、海外のチームに関わってきた方々は計り知れないほどの量の情報を持っています。そして英語が話せる人ほど、主体的に学び、成長し続ける人が多い印象です。
ラグビー界でも最近、日本人の優れたコーチたちが出てきています。彼らは若い時に海外に出て、本場のスポーツ文化やコーチング、マネジメントを学んでいる。そして今も、普段から海外のコーチとオンラインでミーティングを重ね、経験をアップデートし続けているのです。
私の経験上、実際に英語力を持っている人が1カ月で10のことを学べるとしたら、英語が話せない人は残念ながら1くらいでしょう。それが1ヶ月、1年……と積み重なっていくうちに、追いつけないほどの大きな差となってしまう。今はそういう時代なのだと思います。
学生のうちに
英語を身につけておくこと。
- もう一つ私が伝えたいのは、早い段階で英語を身につけることの重要性です。社会人になって英語を一から学んだり、海外に留学したりするよりも、国内でスポーツの知識と英語を身につけて上で現場に出た方が、即戦力としての価値があるのではないかと考えています。
やはり一度社会人として現場に出てしまうと、日々、目の前の仕事にどうしても忙殺されてしまいがちです。しかし、その人に既にベースとして英語力が備わっていれば、現場での成長度合いや伸び幅は全然違ってきます。日本語しかできない人が海外の情報を探し出して翻訳し、自分の中に取り入れる作業は、とても大変です。時間のある学生のうちに、英語力の基礎を身につけておくことが鍵になると思います。
あとは勇気を持てるか
どうかだけ。
- 現在、スポーツ界には多種多様な国からコーチ、スタッフ、選手が来日しています。ラグビーでいえば南半球やヨーロッパの国々の人間が、独特の訛りや表現で英語を話しています。それらは時に、同じ英語とは思えないほどのバラエティーに富んでいます。従来の学校で習う「教科書通りの英語」だけが英語ではないことが、スポーツ現場に来ればよくわかります。
そのため、スポーツ現場で飛び交う多様な「生の英語」に触れておくことも、この世界で仕事をする上ではとても大切です。それが可能な環境が履正社にあることは、学生さんにとって非常に大きいと思います。あとは勇気を持てるかどうか、だけではないでしょうか。
我々のチームで
どれだけ成長できるか。
- NTTドコモレッドハリケーンズでは、人材を採用するにあたって、「その方自身が我々のチームでどれだけ成長できるか」ということを重視しています。現場でどん欲に学び、もし万が一この先チームを離れることがあっても、来る前よりもさらに高いレベルで、違う舞台で活躍してもらえるような人材として羽ばたいてほしいと思っています。そういう方がいずれ巡りめぐって帰ってくることで、チームの礎が強化されていく。そのように考えています。
今、その「成長」のために絶対に必要となるものが英語です。その英語力を土台に、もっともっと自分の専門性に磨きをかけ、自分自身を成長させたい。そんな人材が増えていけば、日本のスポーツ文化のレベルは今後、ますます向上していくでしょう。